以前、ヘッドラインでちょこっと紹介しましたが、読んでみたら面白かったので改めて取り上げてみます。
[本]ディズニーアニメコミック エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~/ピーター・デヴィッド・編、太田有香・訳(amazon)
ソフトバンククリエイティブ 2011.8.24発売 1575円
ISBN:978-4-7973-6665-5
この本は、今年の夏にゲームソフトとして発売された「エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~」という作品をコミカライズしたものです。中身はオールカラーでアメコミ特有のコントラストの強い作風にになっています。そして一応、元作品もリンク。
[Wii]ディズニー エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~(amazon)
任天堂 2011.8.4発売 5800円
ディズニーはよく、映画作品を元にした絵本やコミック、小説などを幅広く発売していますが、それらは基本的に子供向けにアレンジしたものだったりします。なのでオリジナルゲームをコミカライズしたこの作品もそういう類のものなのかなと思っていたんですが、ところがどっこい、なかなか読み応えのある内容に仕上がっていました。
ただ、僕はゲームの方はやっていないので、ゲームをやった人からするとやっぱり「これ読むんだったらゲームやった方がいいよ」と思われるのかもしれません(実際、かなり内容を端折っている風ではあったので)。なのでここに書くことは元のゲームをやっていない人の反応として受け取って頂ければと思います。
この作品はタイトルのとおりミッキーマウスを主人公にした物語なんですが、注目すべきポイントがあって、「しあわせウサギのオズワルド」とミッキーが初共演を果たした記念すべき作品でもあるんですね。ディズニー好きの方ならご存知だと思いますが、オズワルドはウォルト・ディズニーがミッキーよりも前に制作したアニメーションだったものの、いろいろ揉めて、アニメーションに関する一切の権利を手放すことになってしまったという不遇の作品です(その不幸をバネに生みだしたのがミッキーというわけです)。それから約80年後の2006年にウォルト・ディズニー・カンパニーがオズワルドの権利を取り戻し、晴れてミッキーとオズワルドの共演が実現したのでした。
ただ単にミッキーとオズワルドの共演と聞くと、2人が手を取り合って冒険する物語を想像するかもしれません。楽しく活躍するミッキーとオズワルド。でも、それは2人の境遇を振り返ると不可能なシチュエーションなのでした。
「世界で最初に人気者になり、そして世界で最初に忘れられたアニメキャラクター」
オズワルドにはいつものディズニー作品ではあり得ないような”役割”が与えられていたのでした。
オズワルドは「ウェイスト・ランド」という街に住んでいるんですが、この街にもすごいストーリーがあって、どうもディズニーランドと対になった場所になっているようなんですね。魔法のようにゴミ1つない場所(=ディズニーランド)のゴミは本当に魔法によって消されていて、その消えたゴミが行く先がウェイスト・ランドだと言うのです。
オズワルドはこの場所に最初にやってきた住人で、あとからやってきたキャラクター達とともに使えるゴミを集め、家を建て、街を作り、暮らし始めたというわけです。
そしてオズワルドはミッキーマウスに対して特別な感情を抱いていました。それは文字通り積年の思いと言ってもいいかもしれません。本当はミッキーがいる場所に自分がいたはずなのに! オズワルドにはミッキーのことを自分からファンも仲間も何もかもを奪っていった存在だと映っていたのでした(そしてそれはある意味事実なのかもしれません)。それが今では誰からも忘れられ、こんな日の当たらない場所で暮らしているんです。しかも名前が「しあわせウサギ」って。これほどまでに皮肉な運命を背負ったキャラクターが他にいるでしょうか。
でもそんなオズワルドも、同じく世間から忘れられこの場所にやってきたキャラクターたちと穏やかに暮らしていたのでした。ところがあるちょっとしたことが原因で、ウェイスト・ランドの秩序は大きく崩れてしまうのでした。
その原因はミッキーマウスにありました。しかもそれはミッキーにとってはちょっとした楽しいいたずらだったのでした。秩序を元に戻すためウェイスト・ランドにやってきたミッキーはついに、オズワルドと対面を果たします。
…ここまでやたら長く説明してしまいましたが、何が言いたかったかというとこの場面なんです。この2人が対峙する場面、ディズニーの歴史に刻むべき名シーンでしょうこれは。本当に泣きそうになりましたよ。オズワルドが何故今復活し、2人は出会わなければならなかったのか。この作品の何もかもがこの場面に照準を合わせて作り込まれているんですね。
そして最後まで読めば、絶対オズワルドのことが大好きになっているはずです。これ、オズワルドを再びディズニーに迎えるにあたって、最高の脚本ですよ。今回僕はコミックとして読みましたが、ゲームソフト向けにこういった脚本を用意するとはディズニーもすごいことをやるなぁと思いました。劇場アニメーションとして見たいくらいです。
ゲームの方も前から気になってはいたものの、3Dアクションアドベンチャーというジャンル自体がよほど完成度が高くないとストレスの溜まりやすいジャンルだし、他にもやりたい作品があるのでスルーしちゃっていたのですが、また一段落したらぜひやってみたいと思いました。オズワルド、もっと活躍の場所が増えるといいなぁ。
→[本]ディズニーアニメコミック エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~(出版社の紹介ページ)
→エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~(任天堂公式サイト)
→[本]The Art of Disney Epic Mickey(amazon)…洋書ですが、アートブックも発売されるようです。
→ディズニー エピックミッキー コミック(App Store)…エピックミッキーのコミックアプリがiTunesでも配信されています。未確認ですが、アプリ内で販売されているグラフィック・ノベルというのが今回紹介した書籍と同じもののようです。
→[DVD]オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット 限定保存版(amazon)…2008年に初DVD化されたパッケージの再販版が12/21発売予定。前のもまだ在庫あるようです。
→『エピックミッキー』の続編、ディズニーが計画・・・仮称なども明らかに(iNSIDE 2011.8.28)…エピックミッキーには続編制作の話もすでに出ています。
→[本]ディズニーアニメコミック カーズ2/アレサンドロ・フェラーリ・編、太田有香・訳(amazon)…これはソフトバンククリエイティブから出ている映画「カーズ2」のコミカライズ。ちらっと見ただけですがこちらは子供向けっぽい内容のようでした。