「トムとジェリー」など、その昔アメリカで制作されていたアニメーション作品について書かれた本が復刊したという話を目にして、先日図書館で借りてきたのがこちらの書籍です。
[本]定本 アニメーションのギャグ世界/森卓也(amazon)
アスペクト 2009.4.27発売 2835円
ISBN:978-4757215375
僕自身、そこまで興味のあるジャンルの話でもないので、ちらっとどんなものか見てみようと思っただけだったんですが、正直びっくりしました。こういった作品に対して、ここまで深い洞察をもって書かれた書籍があったとは。
この本が取り上げているのは、ポパイ、ベティ・ブープをはじめ、トムとジェリー、ドルーピー、ウッディー・ウッドペッカー、それからバックス・バニーをはじめとするワーナー・ブラザーズ作品、ピンクパンサーなど、本の中では”漫画映画”という名称で呼ばれているんですが、1920年代~1960年代頃にアメリカで盛んに作られていた劇場用短編アニメーション作品たちです。
元の本は1978年に出版されたもののすぐ絶版になり、最近ではネットなどで高値で取引されていたものがらしいんですが、この度晴れて、大幅な増補を施し復刊したという経緯があったようです。
本の中では特に、作品中の「ギャグ」にスポットを当てていて、ギャグが発生するシーンの描写が事細かに記述されているんですね。ビデオのない時代にそれができるというのもすごいんですが、更にそのギャグがなぜ面白いのか、決まっているのかという点をこれまた詳細に解説するという2段構えで進んでいきます。
それがまたすごくて、ギャグ1つ取っても、作品上のテンポや流れ、パターンについての説明や、時には同時代に制作された他作品へのオマージュを指摘したり、その上で作者がそのギャグに込めた思いまでも推測し解き明かしていくという、多角的な解説が展開されています。
そんな昔の作品のギャグを解説されたところで…と思いがちですが、黎明期ならではのアバンギャルドな発想によって紡がれた、バリエーション豊かなギャグの数々は、決して古い新しいという次元で片付けられるものではないことに気づかされます。
ちなみに、本の中で紹介されている作品を見たいと思った場合は、巻末に作品リストとDVD・VHSリストが掲載されていて、辿っていけるようになっています。この点も親切で、資料的価値を高めているポイントです。
ただ、やはりパッケージ化されていない作品も多いみたいで、本の中で頻繁に出てくるテックス・エイヴリー作品は日本ではほとんど流通していないというのがちょっと悲しいですね。
当時書かれたというあとがきには、今でこそこうした作品のキャラクターはTシャツになったり、CMに出演したりしているけど、その原典に出会うチャンスは少なくなってきている、といった内容の記述があります。
30年たった今、それらのキャラクターはますますマスコット的になり、キャラが好きでも原作は見たことがないという人もたくさんいるんじゃないでしょうか(僕含む)。
そんな時代だからこそ、この本が持つユニークな輝きは当時よりもむしろ大きくなっている、と言えるのかもしれません。
→[本]定本 アニメーションのギャグ世界/森卓也(出版社の紹介ページ)
→アメリカン・アニメーションの黄金時代(Wikipedia)
→テックス・アヴェリー(Wikipedia)
関連してですが、最近宝島社からパブリックドメイン作品を収録したDVD-BOXシリーズが発売されています。字幕のみで吹き替えもないし、簡素な作りのDVDですが、安い割に収録数が多いので、まとめてたくさん見たい人にはオススメです(ちなみに書籍扱いなので本屋さんで売られているようです)。
→トムとジェリー DVD BOX(amazon)
→トムとジェリー DVD BOX vol.2(amazon)
(7&Y)
→ポパイ DVD BOX(amazon)
(7&Y)
→ウッディー・ウッドペッカー DVD BOX(amazon)
→ルーニー・テューンズ DVD BOX(amazon)