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今回のインタビュー記事もThe 64DREAMから。
1997年4月号に掲載されていたインタビューを2回に分けてお送りします。
今回のインタビューは「MOTHER3」、それに「キャベツ」に
関するものとしては最も重要であると言えるでしょう。

ちなみにこの号の表紙はどせいさんなんですよね。
これを最初に見たときの衝撃、
「3が近い未来に出る」という期待への
胸の高鳴りを僕は忘れることはないでしょう(^^)。
























スクープ続出!?
糸井重里さん
MOTHER3について
またまた大いに語る

先月号で「MOTHER3」の主人公を始め、
いくつかの画面写真が発表されたけど、謎はさらに深まるばかり。
ストーリーはどうなるのか。登場するキャラクターは。
64DDで発売されるのか。一度気になり始めたら、
もうトイレでもじっと座っていられない。
スカートの中をチラチラされたら、その中が何色か
もっと気になるじゃないかぁ(一体なんのハナシや)。
こうなったら糸井重里さん本人に聞くしかないのだ。
というわけで、昨夏に続いて直撃インタビュー。
思わずポロッと秘密をしゃべった糸井さんなのだった。






MOTHER3 ついにここまで分かった
いままでになかったRPGになりそうな予感…。

ブタがやたらと出てくる理由もついに判明。
先月公開された写真の謎が次々と判明していくぞ。



――ちらほらと見えてきた「MOTHER3」なんすけど、まずは先月発表された画面写真から…。このタツマイリ村っていうのは、最初の街なんですか?

糸井さん タツマイリって、トロピカルジャングルの近くなんだけど、最初の街って言う発想してないんだよね。う~ん、主人公をチェンジしていくっていうのが、やっぱり一番大きなキーで、ある主人公のメインフィールドはここ。別の主人公のメインフィールドはここ、みたいな感じなんですよ。だから、訪れる街の順番っていうのはないんですよね。例えば、Aという主人公が火を燃やしたとしますよね。でも、主人公をチェンジして、少し前の時間に訪れたとすると、ちょうどその火を燃やしているところを通りかかるかもしれない。そういう入り組んだ構造になっていて、ロードムービー(※1)じゃないんですよ。

――途中までこっちで遊んで、今度はこっちを遊ぶっていう「スーパーマリオ64」のステージみたいな感じっていうことですか?

糸井さん そうかもしんないですね。同じ場所は、同じ場所だけど、変化していきますからね、今度は64DD(※2)だから。それでゴミを捨てたら、そのままゴミはずっと残ってるんですよね、そこに…。

――ある意味じゃあ、ひとつの壮大な話があって、いろんなキャラクターが出てくるという”グランドホテル形式(※3)”っぽいってことですよね。

糸井さん そうかもしれない。いや、人に発表できるような制作進行の仕方してないんだよなぁ~(笑)

――じゃあ、話を変えて…。今回の「3」の構想は「2」を作ってるときに考えたんですよね。

糸井さん そうです。あの~、ほんとはね、探偵物語っていうか、街を主人公にしたハードボイルドにしたかったんですよ。例えば、探偵がAという街にいて、いろんなことが起こっていて、事件を解決するために、浮気調査をしたり、恋をしたり。でも、電車に乗ってBの街にも行ったり、またAの街に戻ってきたりっていうように、キャラクターを動かしたくなかったんですよ。

――それがコンセプトですよね。

糸井さん まぁ、究極はキャラ全員にAIつけたいとは思いますけどね。今は魚につけるってところまでは考えられるけど。人物全員にAI(※4)つけると、果たしてゲームとして成り立つかどうかというところまで話がいっちゃうからな。

――確かに…。ほんで、主人公として発表されているのは3人ですけど…。

糸井さん あぁ、主人公の数は全部で8人とか、それくらいになります。プレイヤーが操るプレイヤーキャラはね。

――じゃあ、この3人が一緒にパーティーで行動することはあるんですか?
 
糸井さん ないって言っちゃうとつまんないしなぁ。多分ないです。ただ、このダスターっていうのは、いろんなとこに出ますよ。リュカもそうです。で、謎の行商人とサルサは、そんなに出ないかな。まぁ、どせいさんをプレイヤーキャラにしてみたいって気持ちもないこともないですよ。でも、困っちゃうだろうね(笑)。しばらく立ち止まったまま動かなくなったりしてね。

――でも、それぞれのステージ(章)にそれぞれの主人公がいると聞くと、最終ステージではプレイヤーキャラ全員が集まるっていうイメージがあるんですけど…。

糸井さん そうなんですよ。でも、そうとは、限らないですよ。それに、なんか話しちゃうとつまんないけど…(ピ~)…っていうくらい自由ですよ。

――いやいや、イキナリ(ピ~)ってオフレコ情報も飛び出しましたけど、ものすごい難しいバランスですね。プレイヤーの気持ちは、確実に裏切るかもしれないし。

糸井さん 裏切ります。それは、もう確実です。そういうの平気だから(笑)。

――それと時代背景は、西部開拓時代っぽいイメージですけど、こういうワケの分かんないアイスクリームみたいな浮遊物もあって、なんやねん、これって(笑)。

糸井さん 時代背景といっても、だいたいみんな時代考証して”時代”を作ってるわけじゃないんで、どうだっていいんですよね。以前は、1900年代なんていうふうにさ、デタラメも言えたじゃない。でも今回は、ちょっと言いづらいですよね。

――とりあえず、これまでの「MOTHER」シリーズにあった現代アメリカの田舎町の雰囲気、それはもう消えてますよね。

糸井さん 消えてますね。でも、出てくるかもしれないですよね、まだ(笑)。

――気になる発言やなぁ(笑)。もしかするとタイムトラベルものとか、パラレルワールド(※5)ものなのかな。

糸井さん 僕の概念の中に、タイムトラベルだとかパラレルワールドだとかっていう言葉はないんですよ。それってやっぱりある種のパターンじゃないですか。となると、やっぱり似たようなもんが出来ちゃうんで。もともとRPGにしても、サイコロ振るRPG(※6)の出発が中世という設定だったっていうところで、RPGといえば中世っていうパターンになった。なんで現代じゃないんだよっていうのが「MOTHER」だったけど、時代背景はたいした問題じゃないですよ。だって、ぷよぷよっていつの時代の生き物って、分かんないですからね(笑)。

――そういう意味じゃあ、本当の意味でのRPGというわけですよね。ほんとアドリブで始まったというRPGに…。

糸井さん そうです、そうです。やっぱり、面白いのはアドリブなんですよ。で、そのアドリブをいかにアドリブに見せるように構成するかっていうことがちゃんと出来れば、いいんですよね。例えば、ゲームって魔法もあればエセ科学もあって、なんでもできちゃうから。その自由さっていうのを奪われたくないんで、なんでもありですね。ルールで決めとかなきゃいけないってことは、もっとその外にあるような気がするな。

――まぁ、そこまで自由だと、いろんなところを旅する楽しさって、ありそうですね。

糸井さん ありますよ。それでやっぱり今までのゲームだと、見ただけでどんな場所なんだろうってある程度予想つくんだけど、もっと”始めて行く場所”という感じを出したいんですよ。マップの中の景色そのものがダンジョン状態っていうか、なんか踏み込みたくないなぁ~っていうのを、なるべく入れたいですね(笑)。
※この欄の注釈は雑誌に掲載されていたものです。なお、ピンク色の文字は管理人の勝手な注釈です。










ロードムービー(※1)
簡単に言っちゃうと、旅をする映画のこと。旅をしながらいろんな人と出会ったり別れたり。まぁ、RPGってのはロードムービーみたいなもんやね。

64DD(※2)
昨年(※’96年)の「初心会」(※現在のNINTENDOスペースワールドのこと)で初めて公開された「64ディスクドライブ(通称64DD)」(※結局正式名称も64DDで統一されました)。価格はいぜん不明だか、発売時期は97年末になる模様だ。同時発売ソフトはもちろん「MOTHER3」(※というわけで当時の3は97年末発売予定でした)。ただし、ソフトが1本じゃ寂しいので「マリオペイント64」や「シムシティ」などの64DDタイトルも同時に発売されるかも(※ご存知のとおり、64DDの登場は99年末にずれ込み、「MOTHER3」は出ませんでした。でもここで挙がっている2つのソフトはタイトルが微妙に変わったもののちゃんと64DDで出ましたね)

グランドホテル形式(※3)
いろんな人が泊まっているホテルの日常を描いた、昔の映画「グランドホテル」にちなんで名付けられたシナリオの手法。まぁ、ひとつの空間に何人もの登場人物が出てきて、その人たちの人生を描くってのがグランドホテル形式。ある意味では、ホテルが主人公というわけなんだね。飛行機墜落映画や船沈没映画も、同様の形式なのだな。



AI(※4)
いわゆる人工知能のこと。といってもそんなに賢いわけではない。「ドラクエ4」で、初めて仲間キャラにAIが導入され、わざわざ命令しなくてもキャラが勝手に考えて、攻撃とかしてくれるようになった。もし登場人物全員にAIを導入したら、気まぐれで会話してくれないキャラも出るだろうし、ゲームが進まないかもしれないけど、より現実的。もちろん64の性能なら実現も可能なんである。











































パラレルワールド(※5)
簡単に言うと、この世の中となんらかの関係のある別の世界。まぁ、「ドラクエ4」での裏の世界のことだな。




RPG(※6)
いわゆるロールプレイングゲームだな。ロールってのは、役柄のこと。プレイングってのは、演じるってこと。つまりRPGってのは、何かの役を演じるゲームのことだ。ちなみに、RPGが発明されたのは23年前。シミュレーションのボードゲームで遊んでいる最中にプレイヤーの1人がアドリブで物語を語り始めたのが始まりと言われているんだな。まぁ、ボードゲームだからサイコロを振って、戦闘。ストーリー展開は遊んでいるメンバーで話をしながら進める。というんで、ボードゲームのRPGを、テーブルトークRPGと言う。まぁ、友達とワイワイ話しながらやるのが元祖RPG。他のプレイヤーをコンピュータが代わりにやってくれているのが、最近のRPGなんだね。




前作に続いて、アンドーナツ博士も登場。
ポーキー率いる(?)ブタ軍団もぶーぶー。

舌をかみそうな名前のキャラクターが数多く登場してくる
「MOTHER3」なんだけど、果たしてその真相とは…。




――そういや、今回のリリース画面ではいたるところに”ブタ”が出ているんすけど、やっぱ大きなキーワードなんすか。

糸井さん ブタはバンバン出てますね。

――ほんで、その延長線上にいるのが、デブのポーキーですよね。ってことは、ポーキーがボスキャラかな(笑)。

糸井さん ボスキャラにはなりにくいんですよ、ポーキーは。それにボスキャラっていう発想が、やっぱ今までと同じだし。今までのRPGってさ、ホントは話が全部同じなんですよ。「MOTHER」だろうが「ドラクエ」だろうが。で、その”同じさ”に耐えられなくなって「MOTHER3」を考えたんでね。だから大失敗作になるかもしれないし。でも、今までのRPGって呼ばれているものは、基本的にアドベンチャーゲーム+シミュレーションゲームですよね。そのスタイルの不自由さっていうのを、ちょっと乗り超えてみたかったんで、開発中にもそれは追求していきますよ。

――戦闘シーンなんかも変わってくるわけですよね。前作ではドラムメーターが新しかったすけどね。

糸井さん あれも小ネタではあるんだけど、コンセプトとしては、非常に重要でね。ああいう要素は、今回ももっと激しく、濃く使いたいな。「あ、痛てててっ…」っていう感じをもっと出せるようにしたいですね。数字のやり取りを絵で表現するっていうような戦闘スタイル(※7)だけじゃあ俺自身があんまりピンとこないんでね。

――それに、音を使うっていうのが戦闘のキーワードになってますよね。

糸井さん 戦闘っていうのを音をきっかけに作りたいんですよ。ようするに、64のコントローラーって、ちっちゃいシンセサイザーになる力を持ってるんで、その力を十分に出してやろうと思って、早いうちに決めたんですよ。ほんとそれだけで、別のゲームできるくらいの実力あると思うよ。だから音楽を演奏するだけじゃなくて、自分が音に干渉できるっていうのも入れられると思うんで、それはもうエフェクトであり、ミュージックでありっていうような使い方をするつもり。それと、戦闘もそんなにやたらにやらせたくないんですよ。だから同じ人と何度も戦うってことはありうるんじゃないですか。ありうるっていうか、それはあるね。向こうも強くなってたりすると面白いなって言ってるんですけどね。

――それと、今回は街やキャラクターの名前が変わってますよね。

糸井さん しゃべって変な感じの言葉を出したかったんですよ。背中がかゆくなるようなネーミングっていうのに挑戦してるんですよ、今回は(笑)。その言葉自体がなんだか知んないけど、個性があるっていう言葉をね。1回聞いただけでは絶対覚えられない言葉とか。例えば、デスペラード・クラッシュ・マンボ・カンボなんか、好きだな、これ~…。

――これは、絶対に覚えられませんよ。それと、このコロビーっていますよね。

糸井さん まぁ、この目つきってね、今までのアニメ絵にはなくって、最近の漫画だけにはあるんだよね。

――で、具体的な動きはもうみたんすか。

糸井さん あの~、変なもんですよ。結構かわいいんですよね。「せ~の、ゴロゴロン。せ~の、ゴロゴロン」って転がるんです。今は一匹だけだけど、最終的には集団で転がるというのもありえますよね。

――それに、この”気ままなお兄さん”ってのは今回も出てくるんですか。編集部ではラモスって呼んでるんですけど。

糸井さん まぁ、気ままなお兄さんはここに入れてるけど。出さないかもしんない。

――げっ、次の記事も、ラモスで行くつもりだったのに…。

糸井さん OK、どうぞ(笑)。

――でも、ラモスは出ないかもしれない。

糸井さん ただ、過去2度も出たんだから、脇役として「まだいたか!」っていうのもありだよね。あと、あのマヌケなシンプルなロックンロールを聞かせたいっていう気持ちもあるから、そのために出す必要があるかもしれない(笑)。

――あぁ、良かったぁ。ところで、この博士なんですけど…。

糸井さん アンドーナツ博士です。

――えぇぇぇぇ~、こりゃスクープですよ。だって資料には、砂糖をたっぷりつけたドーナツが好きな博士とだけ書いてあったんで、別の博士かと…。

糸井さん それは資料を書いた人が楽しんで書いたんでしょう。

――じゃあ、前回に続いて出てくるキャラっていうと…。

糸井さん まずポーキーは出ますよね。それにどせいさんも出ますよね。アンドーナツ博士も出ますよね。まぁ、それくらいは言ってもいいですね…。

――もう聞いたハナシじゃないですか…。

糸井さん あとは、言う必要もないっていう気がするな。意外なところで、意外な人に会えたりっていう話も楽屋オチっぽくあるけど、ストーリー上は別人でも全然構わないんでね。それに、登場する一人一人のキャラの顔が全部違う(※8)から、みればすぐに分かるようにはするよ。


























戦闘スタイル(※7)
RPGの戦闘は、単純にいえば、攻撃力・防御力の引き算。見た目には派手になるけど、基本的には23年前のRPGからはシステム自体は変わっていないんだよね。でも、「MOTHER2」のドラムメーターはアナログっぽくて画期的だったのだ。













































































キャラの顔が全部違う(※8)
普通のRPGて、マシンの性能やソフトの容量の限界で、見た目が同じ人ってたくさん出てくるよね。敵キャラでもただの色違いとか…。「MOTHER3」ではすべての登場キャラを変えようと言うんである。










それでは、次回に続きます。

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