佐藤雅彦について
佐藤雅彦について何で知ったのか詳しくは覚えていないのですが、多分「スーパーテレビ」かなにかの番組でCMの裏側の特集でもしてて、それを見て知ったんだと思います。
それからずいぶんして、今度はゲームを作るという話が聞こえてきました。ゲーム雑誌などで「このゲームはソニーが作ったゲーム機だからこそできた」といった発言を読んで、「え〜、64じゃダメ?」なんて、任天堂ファンの僕としてはがっかりしたことは鮮明に覚えています。
それから1、2年、今度は本屋で偶然「クリック」という本を見つけました。佐藤雅彦ってあの「I.Q.」(先程のゲームタイトル)の人だよなあ…。エッセイかな?
なんて手に取ってみたらあの中身で、もうそれはそれはびっくり仰天(^^)。これは立ち読みで済ませてしまうのはもったいなさすぎる!
と、即レジ行きとなったのでした。
その後図書館でこの本を見かけることもあって、「よく考えたら買わなくてもよかったかな」なんて一瞬よぎったこともあったけど、それでもやっぱり買ってよかった、何度も読み返せるしなあと思いなおした心の1冊です。
そんなこんなで、僕は佐藤雅彦のことを好きというほど知ってるわけじゃないけど、いつも気にしている存在という感じです。もっと本音(?)で書いてしまうと、ちょっとスマートぶったええ歳のおっさんが、なんだか楽しくて、かわいくて、おもしろそうなことやってて、しかもそれが仕事で、更に大ヒット飛ばしてるなんて、はっきり言ってズルいっ!!
ってことですね(^^;)。
いや、本当はズルいだなんて思ってなくて、佐藤雅彦は本当にスマートだし、才能を遺憾なく発揮させて誰も真似できないことをやっていることの結果だとは分かっているつもりですが、それでも「ズルい」と言っちゃいたくなってしまうこの気持ちを察してくれれば幸いです。
「プチ哲学」について
そしてやっと「プチ哲学」についてですが、実はこの本は立ち読みで済ませてしまったのでした。かなり前に1度さらっと流して読んだだけの本のことを、いくらネットとは言え堂々と書いてしまうとはいかがなものか、といった細かいことは考えないでおこうと自分に言い聞かせながら話を進めます。
この「プチ哲学」という本、むちゃくちゃ簡単に言ってしまうと2コマ漫画なんですよね。
更にもういっちょ書くと、その2コマを使ってモノの見方とか、視点ですね。こうだと思い込んでいたことだって、ちょっと視点を変えるだけで「あれっ?」って本当のこと(または別の意味)に気づかされる、そんなことが日常にもたくさんありますよ。ちょっとだけ深く考えてみませんか。といったことが全編のテーマになっています。
でね、この本を読んだ時も「なるほどなあ」と思い、買おうかどうしようか迷ったんだけど、とりあえず本は逃げないやと思ってまだ買ってないという状態なんですが、僕はこの本のすごいところって内容の他にもあるんじゃないだろうかってことをふと思ったんです。
「すごいところ」はどこなのか
「プチ哲学」の2コマ漫画な内容は、佐藤雅彦独特のセンスに溢れているけど、そういうものを削ぎ落としてよく見てみると、実は内容(ネタ)的には結構普通の漫画なんじゃないかと思ったんです。
例えば、佐藤雅彦がついに漫画界に進出!
とか銘打って、普通の「漫画」としてあの本を世に出したら、果たして注目されただろうか。とか、そういうことを考えていったらあの本は単に内容がすごいだけじゃない。むしろあの内容は意外とあるものなんじゃないかって気すらしてきたんです。
立ち止まらせてくれた「プチ哲学」
最近はいろんなものの速度が速くなってきて、その速さについていくだけで精一杯だ。なんて思う今日この頃ですが、例えば漫画にしてもCDにしても、どんどん新しいものがでてきますよね。そして僕たち受け手側はそれを次から次へと消費していくだけっていう図式が当たり前になりすぎてしまって、今はそれがいいとか悪いとか、考える暇もない状況だと思うんです。
ところがこの「プチ哲学」という本は、そんな僕を(一瞬かもしれないけど)立ち止まらせてくれました。
普段僕たちは難しいことは何も考えたくないと思っている反面、ちょっとだけなら考えてみるのもいいかも、といった気持ちをどこかに持っている気がします。
そこを察してか佐藤雅彦は「プチ哲学」をきっかけとして、「立ち止まってちょっとだけ深く考えてみる」という方向に道しるべを立ててくれたんじゃないかと。
そう考えるとこの本の「単なる2コマ漫画じゃない部分」というのがおのずと見えてきました。内容の見せ方なんですね。「プチ哲学」というタイトルもそうですが、その内容も読み手が「ちょっとだけ深く考えてみる」という方向へ自然と導かれるように気を遣って作られているんですね。それはまるで、佐藤雅彦から”ちょっとだけ深く考えてみる接待”を受けているような気分とでも言っていいですね。
流されない作品として
さっき書いたようにこの本を普通の「漫画」として出したとしても、そこはやっぱり面白いので話題になると思います。
でも普通の面白い漫画だって独特の視点を持っているものなんです。ただ受け手はそこに「笑う」ことはあっても、「考える」ことはしないだけで。
ということはいくら佐藤雅彦だって他と同じように作品を発表するだけでは、最終的には他の多くのモノたちと一緒に流されてしまう可能性があるんですよね。
ところがそこに「考えてみませんか」という受け手誘導型のスタンスを取り入れることによって、どこにもなく、ただ流されるだけじゃない輝きを発することに成功しているんだと思います。
ここまでくると、時代の流れを読む力、商品プレゼンテーションのすごさ、そして唯一無二の感性を兼ね備えた、誰とも違う視点を持つ「プチ哲学家」佐藤雅彦だからこそできる領域と言えるんでしょう。
また、ここまで書いておいて、やっぱりズルいような気もしたり(^^;)。
そんな訳で今思うことは、佐藤雅彦からこんなにいい”接待”を受けておきながらそのままでいいのか、本を買うことでお返しをしなければならないのでは、ということなんですが、まあここでこんなに褒めちぎっちゃったんでそれでご勘弁ということにさせて頂きます(^^;)。
LINK
佐藤雅彦TOPICS…文中にもでてきた「クリック」という本の中に登場する「アルデンテの歌」というのがすごく気になって、ネットができるようになってすぐにこのHPに接続したという思い出のHP(^^)。
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