↑BACK
ぼくとうさ子
うさ子は僕の大切な友達だ。
ある日、森の中にある「かんばん」のあたりで出会って以来、
ずっと一緒に遊んでいるんだ。
今日もうさ子と遊ぼうと、緑の森の中を進んでいった。
うさ子はいつもの「かんばん」の前、ちょこんと座って僕のことを待っていた。
かわいいやつだと思ってそう言うと、
うさ子は左の耳をぴるんとさせて、「かわいいうさぎよ」とうれしそう。
(うさぎとなんて、一緒に居るだけで楽しいよね)
次の日も遊ぼうということになった。
うさ子は「それじゃあ帰ったら電話するよ」と言ってきた。
すかさず僕が、うさ子は電話なんか持ってないだろうと返すと、
右の耳をぴりんとさせて、「じゃあ手紙でも書くよ」だって。
それを聞いた僕は、
うさ子は字なんて書けたっけ?と、からかってやった。
するとうさ子は両方の耳をぴくりとさせて
「じゃあもういい!」と深緑の森の中へ消えていった。
それ以来、いくら「かんばん」の前で待ってたってうさ子は現れなかったんだ。
あんなことで傷つくなんて思ってなかったんだよ…。
…うさ子がうるうるした目でこっちを見ている。
「所詮人間とうさぎの友情なんて、
その溝を埋めること、できやしないんだよ…」
……!
夢だった。
目覚めた今は夜明け前。
青く光る空の下、僕は薄暗い森の中を走っていたんだ。
「かんばん」の前まで来た時、大声で叫びたかった。
うさ子に絶対聞える声で叫びたかった。
でも僕にはできなかった。
叫べなかったんだ。
うなだれて、落ち込んで、家へ戻るために
足取り重く、歩いた。とぼとぼと。
家に帰ってきて、ポストに届いていた朝刊を取った。
すると挟まっていた1枚の紙切れが足元に。
手紙だった。
しかも、字のない手紙。
そのくしゃくしゃの紙には葉っぱが並べて貼りつけてあった。
僕は再び走っていた。森に向かって!
今度は言える、大きな声で
「うさ子〜、ごめんよ〜!」って!!
もう森は朝日できらきら光っていた。
2000.11.8