「え! 宇宙へ旅行したいんじゃなかったんですか?」
「イーエ、誰もそんなこと言ってないヨ!」
久々のお客様だと思ったのに、どうも話がかみ合いません。
「私は33年前に行きたいのデス!」
え、33年前??
いやうちはロケット屋で宇宙に行けるロケットはありますが、
タイムマシンにはなりませんのでタイムトラベルはちょっと…。
「そこをナントカ!」
「いや無理ですよ」
「ナントカ」
「無理」
「代金の10円を先払いしますカラ」
「いやいや、先に受け取っても無理なものは無理ですって」
なかなか諦めてくれない。まいったなー。
でも何度も説明していたら、どうにか納得してくれたようでした。
「そうですかー。ムリなのですね。
じゃあかわりにお伺いしたいのですが、
アナタは33年前のこと、覚えていますか?」
「え? 覚えているというか、その時は
まだ生まれていないので何も…」
「やっぱりそうですか。ザンネンです。
失礼いたしました…」
最後におかしなことを聞かれたけど、
やっと帰ってくれました。
久しぶりのお客様だと思ったんだけどなー。
あ、10円もらったままだった!
「お客さーん!」
あれ、もういない…。